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神戸地方裁判所姫路支部 昭和36年(ワ)227号 判決 1963年10月18日

原告 国

訴訟代理人 水野祐一 外四名

被告 河本正一

主文

被告は原告に対し金三十万円及び昭和三十六年十月七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事  実 <省略>

理由

一、滞納会社が昭和三十六年七月十一日現在において別紙滞納税額一覧表記載のとおり合計金一、〇〇九、九一四円の国税を滞納していたことは証人中村佐多志の証言により明らかである。

二、被告が昭和二十六年十月頃滞納会社の取締役に就任、同社加古川支店長として勤務、昭和二十八年二月頃同支店の廃止とともに右取締役を辞任し、その際右会社より退職慰労金として金三十万円を受領したことは当事者間に争いがないところである。原告は右退職慰労金の受領は定款の定め又は株主総会の決議がないのになされたものである旨主張するので、この点について考えるに、成立に争いのな唯甲第一第二号証、官署作成部分は成立に争いがなくその余の部分は証人大槻昭未の証言により真正に成立したものと認められる同第三ないし第十号証、証人中村佐多志の証言により真正に成立したものと認められる同第十一ないし第十三号証、第十四号証の一、二、及び証人井上義明、同大槻昭未、同中村佐多志の各証言によると、右退職金の受領は定款の定め又は株主総会の決議がないのになされたものであることを推認することができ、右認定に反する証人柿本俊一、同徳山勇治、同宮田泰一、同高野正治の各証言、及び被告本人尋問の結果は信用することができず(乙第一号証は証人中村佐多志の証言によると法人登記申請用に作成された書類であることが窺われるから右認定の妨げとはならない。)、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

ところで、株式会社においては取締役に支給する退職慰労金は取締役の受くべき報酬として定款又は株主総会の決議をもつてその額を定めるべきものであるから、前述の被告の滞納会社よりの退職慰労金の受領は法律上の原因を欠くものと認めるの外なく、右受領により被告は同額の利得をして(反証のない限り)右会社に同額の損失を及ぼしたものといわなければならない。従つて、滞納会社は被告の受領と同時に同人に対し同額の不当利得返還請求権を取得したものと認めるのが相当である。

三、次に、原告(所管庁、神戸税務署長)が前記滞納税金徴収のため昭和三十六年七月十一日滞納会社が被告に対して有していた右不当利得返還請求権を差押えるとともに、その旨被告に通知し、右通知はその頃被告に到達したことは当事者間に争いがないところである。

四、そうすると、被告は滞納会社に代位する原告に対し前記不当利得金三十万円及びこれに対する訴状送達の翌日であることが記録上明らかである昭和三十六年十月七日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務あり、原告の請求は正当であるからこれを認容し、民事訴訟法第八十九条第百九十六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 仲西二郎)

別紙滞納税額一覧表<省略>

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